空に預けた恋を誓う〜エリートパイロットは約束の幼馴染を一途に愛しぬく〜
「お母さんはまだ五十代だし、お父さんが残してくれた遺産だってあるでしょう。地元に帰れば親戚もいる。……東京にこだわって無理な暮らしをしなければ、一人で生きていけるはずだよ」
「な……っ、あんな田舎に戻れっていうの!?」
「そうだよ。私はもう、お母さんのために働かないし、面倒も見ない」
はっきりと言い切ると、母は目を見開いた。
これまでは、何を言われても「ごめんなさい」と頭を下げ、理不尽な要求を受け入れてきた。そんな関係が、今、確かに崩れ始めている。
「……拓ちゃんを巻き込むことだけは、絶対に許さない。私にとって大切な人は彼だけ。そんな彼に、迷惑をかけないで」
スカーフの下で、刻まれた痕がじんわりと熱を帯びる。彼が与えてくれた愛情が、迷いを断ち切る強さをくれる。
「さようなら、お母さん。……もう二度と、私があなたの元へ戻ることはないよ」
はっきりと告げたその言葉に、絶縁の意思が宿る。母の顔が怒りと驚愕、そして焦りでみるみる歪んでいく。
「あんた、誰のおかげでここまで……!裏切り者!呪ってやるわ、あんたなんて、どうせすぐに捨てられて──」
「失礼します。警察です」
複数の足音が近づき、駆けつけた警察官たちが一瞬で母を取り囲んだ。
「ちょっと、何よ!放しなさいよ!私は母親なのよ!」
警官に腕を取られて喚き散らす母の姿に、かつての威厳は微塵もなかった。取り乱し、感情のままに声を荒げるその様子は、ただ痛々しく映るばかりだった。