空に預けた恋を誓う〜エリートパイロットは約束の幼馴染を一途に愛しぬく〜

 キィッ、と激しいブレーキ音を立てて一台のタクシーが背後に急停車し、ドアが勢いよく開いた。

「──やっと見つけたわよ!拓翔!!」

 そこから飛び出してきたのは里穂だった。

 それを目にした瞬間、拓翔は一歩前に出て、仄香を背に庇うように静かに立ちはだかる。

 髪を乱し、化粧も崩れ、なりふり構わぬ形相で里穂が駆け寄ってくる。かつての華やかさは影もなく、執念と焦りだけが顔立ちを歪めていた。

「懲戒解雇ってなによ!あんたが余計なことしたせいで……っ、一体どうしてくれんのよ!」

 里穂は拓翔の胸倉を掴み、狂ったように叫ぶ。

(……解雇……?)

 耳に飛び込んできた言葉に、仄香は息を呑む。何がどうなっているのか状況が全く飲み込めないまま、呆然と二人を見つめることしかできない。

 だが、罵声を浴びせられている当の拓翔は眉一つ動かさなかった。そして、心底うんざりしたようにわずかに息を吐く。

「何もかも、お前の自業自得だろ」

「はあ!?」

 里穂がなおも叫び返すが、その声を遮るように拓翔の視線が冷たく落ちた。そこにあるのは怒りですらない、完全な拒絶だった。

「俺に当たり散らしたところで、お前の状況は何も変わらない。見当違いもいいところだな」

 氷のように冷たい声が、里穂のヒステリーを容赦なく切り裂く。
< 141 / 160 >

この作品をシェア

pagetop