空に預けた恋を誓う〜エリートパイロットは約束の幼馴染を一途に愛しぬく〜

 気づけば、この騒動に通りを行き交う人々が次々と足を止め、遠巻きに様子を窺い始めていた。中にはスマートフォンを向ける者もおり、地面に這いつくばる里穂と、それを押さえ込む拓翔へと、好奇と警戒の視線が集まっていく。

「なによ、見てんじゃないわよ!……っ、あんたも!いい加減、離しなさいよ!」

 叫び声に応じるように拓翔が手を離すと、解放された里穂が這いずるように立ち上がる。しかし周囲の視線と向けられるカメラのレンズに気づいた瞬間、その顔がみるみる赤く染まった。

「あんたたち……絶対に、許さないから!」

 捨て台詞を吐き、よろめく足取りのまま逃げるようにその場を去っていく。

 遠ざかっていくその後ろ姿を、仄香は静かに見つめていた。

 かつてはあれほど恐ろしく、逆らうことなど考えられもしなかった姉の背中が、今は驚くほど小さく、惨めに見えた。


 里穂が去った後も、ざわめきがその場に澱んでいた。その中で、拓翔はそっと仄香の肩を抱き寄せ、周囲の視線から庇い隠すようにして車へと導いた。

「……怖かったな。もう大丈夫だ」

 助手席に乗せられ、耳に届いた声音は、先ほどまでとはまるで別人のようにやわらかかった。

 間もなくして運転席に乗り込んできた拓翔が、静かにドアを閉める。

 そのまま車は滑らかに発進し、騒動の余韻が残る場所を颯爽と後にした。

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