空に預けた恋を誓う〜エリートパイロットは約束の幼馴染を一途に愛しぬく〜

 洗い物を終えた仄香は、身に付けていた薄いピンク色のエプロンを解く。

 その下から現れたのは、やわらかな光沢を帯びたシルク混のワンピースだった。淡いクリームベージュを基調に、細かな花柄が控えめに散らされている。ウエストは緩やかに絞られ、裾へ向かってふんわりと広がるラインが、仄香の柔らかな雰囲気をより一層引き立ててくれていた。

 今日はこれから、新婚旅行の打ち合わせのために外出する予定だ。

 クローゼットに並ぶ鞄の中から革のバッグを取り出し、財布や鍵をひとつずつ収めていく。そんなとき、そばに置いていたスマートフォンが震えた。

 画面に表示された愛しい名前を見ただけで、仄香の口元がふっと緩む。

「もしもし、拓ちゃん?」

『仄香。今はまだ家か?』

「うん。出かける準備してるところだよ」

 フライト先からの電話。受話器越しに届く拓翔の声はいつもどおり、仄香の名前を呼ぶときだけは格別の甘さを帯びている。

『そうか。今日の旅行の打ち合わせ……一緒に行けなくて、本当にごめんな』

 その声には、押し隠しきれない悔しさが滲んでいる。

 本来なら、昨日のうちに帰宅し、今日は二人で出かけるはずだった。だがニュースでも報じられていた通り、現地での局地的な大雨の影響で離着陸が制限され、彼は足止めを受けてしまったのだ。

 結果として、帰着は一日遅れとなっている。

「気にしないで、拓ちゃん。天気はどうしようもないもん。こうして連絡くれただけで嬉しいよ」

『けど……二人の旅行のことなのに、一人に行かせるなんて』

 電話の向こうで、彼が小さく息を吐く。そこにはどうにもできない状況へのもどかしさが、はっきりと表れていた。

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