空に預けた恋を誓う〜エリートパイロットは約束の幼馴染を一途に愛しぬく〜
その声音に、どれだけ今日を楽しみにしていたのかが伝わってきて、仄香は思わずくすりと笑った。
「大丈夫。旅行代理店にいたからこういう打ち合わせは慣れてるし、心配しないで。候補は預かっておくから、帰ってきたら、二人で一緒に決めよう?」
仄香は微笑みを浮かべたまま、努めて明るい声で返した。その声を聞いたあと、拓翔はようやく力を抜いたように息をつく。
『……分かった。なるべく早く仕事を終わらせて帰るよ』
「うん、待ってるね」
自然にそう言えたことに、ほんの少しだけ胸が温かくなる。
「……ねえ、拓ちゃん」
『ん?』
「無事に帰ってきてね。……大好きだよ」
その言葉に、電話の向こうで拓翔が息を呑む音が聞こえた。数秒の沈黙の後に囁いた声は。低く、熱を含んでいた。
『ああ。……必ず君のもとに帰る。愛してるよ、仄香』
通話が切れた後も、仄香はしばらくスマートフォンを握りしめていた。耳に残る余韻が、じんわりと心に染み渡っていく。
鞄を手に取り、リビングの照明を落とす。新居の廊下を歩く足元は、半年前のあの日とは違い、一歩一歩が確かな幸福を踏みしめるように力強かった。
愛されているという実感が、やさしく全身を包んでいく。
(さて、行ってこなくちゃ)
独りで向かう旅行代理店。かつて自分が働いていた場所とは違う、新しい未来を選ぶための場所へ、軽やかな足取りで家を後にした。