空に預けた恋を誓う〜エリートパイロットは約束の幼馴染を一途に愛しぬく〜
かつて自分を縛りつけていた日々は、今や遥か雲の下だ。
彼への揺るぎない信頼に身を委ねるこのフライトは、驚くほど穏やかで心地よい。時折訪れるわずかな揺れさえやわらかな余韻のように感じられて、仄香は心穏やかに目を閉じた。
数時間の空の旅を経て、やがて機体はゆるやかに高度を下げ始める。
眼下には、宝石を散りばめたようなエメラルドグリーンの海と澄みきった空が溶け合う、美しい異国の景色が広がっていた。
やがて、機内に聞き慣れた凛とした声が響く。
『皆様、副操縦士の加賀美です。当機はこれより着陸態勢に入ります。現在、目的地の天候は晴れ。飛行高度は一万フィートを切り、順調に降下を続けております。着陸まで今しばらく、空の旅をお楽しみください』
落ち着いた口調で流れるアナウンスの中に、仄香だけが知るわずかな温度が混じる。それが鼓膜をなぞるたび、指の先までじんわりと熱が広がっていく。
機体は滑らかに高さを落とし、やがて衝撃をほとんど感じさせない見事な着地で地上へと降り立った。
滑走路を走り、誘導に従ってゆっくりと速度を落とす。そして、静かにその動きを止めた。
シートベルト着用サインが消え、乗客たちが一斉に立ち上がる。頭上の荷物を取り出す音や、安堵のざわめきが機内に広がっていく。
けれど仄香は、その流れにすぐには加わらなかった。この機体に彼がいると思うだけで、もう少しだけこの場所にいたくなる。