空に預けた恋を誓う〜エリートパイロットは約束の幼馴染を一途に愛しぬく〜
一瞬、呼吸が止まった。
気道が狭まり、空気がうまく入らない。揺れる視界の中で、里穂の唇だけが、なぜかやけに鮮明な弧を描いていた。
「つまりパイロットよ、パイロット!あのきったないクソガキがまさかでしょ?しかもなんか妙に色気も出て、カッコよくなっちゃってさぁ〜」
姉の声はすぐそばで響いているはずなのに、どこか遠くから届いてくるようにぼやけていく。
(拓ちゃん……夢、叶えたんだ)
じわりと、視界が滲む。拓翔が夢を叶えたことが、自分のことのように嬉しかった。
──しかし次の瞬間、母の言葉が容赦なくそれを断ち切ってきた。
「そう……パイロット。良いじゃない。高収入だし将来も安定してて、見目もいいなら女から引く手あまたでしょう?それなら里穂、あなたの候補の一人として選んであげてもいいくらいじゃない?」
母は肘をテーブルにつき、満足げに顎へ指先を添えた。
(え……)
全身から血の気が引いていく。指先から冷えが広がり、感覚が遠のいた。
母の言葉に里穂は得意げに髪を耳にかけ、くすくすと笑う。
「やっぱりお母さんもそう思う?空港でも女の視線集めまくってたし、あの様子じゃたぶん、うちらだけじゃなくグランドスタッフの中にも狙ってるやつゴロゴロいるわね。私も正直、あのレベルなら相手に不足はないかなって思ってたの」
重なる笑い声だけが、心をじわりと抉っていく。