空に預けた恋を誓う〜エリートパイロットは約束の幼馴染を一途に愛しぬく〜
胸がきゅっと締めつけられ、呼吸が乱れる。手に持ったお盆の重みさえ、意識から抜け落ちていく。
(やだ……!そんなの……!)
心の中で叫ぶ。震えを押さえ込もうとしても、うまくいかない。
「……あのっ……」
ようやく絞り出した声は、か細く頼りなかった。それでも、込み上げる想いは抑えきれない。
(拓ちゃんに、会いたい……!)
次の瞬間、仄香は堪えきれずに踏み出していた。
「お願い姉さん……っ、私も、拓ちゃんに会わせて!」
気づけば、里穂の腕を掴んでいた。自分からこんなふうに姉に触れることも、ましてや願いをぶつけることも、これまで一度もなかった。
──けれど必死に伸ばしたその手は、あっさりと切り捨てられた。
「はぁ?何言ってんの、あんた」
一瞬浮かんだ驚きは、すぐに冷えきった表情に塗り替えられる。里穂と母、二人の視線が容赦なく仄香に向けられた。
「馬鹿言わないでよ。あれからもう十年以上経ってんのよ?あんたのことなんて、とっくに忘れてるに決まってんじゃん」
言葉が、容赦なく突き刺さる。声が出せず、絶望感だけが広がっていく。
「子どもの頃にちょっと仲良かっただけでしょ?その程度で会いたいとか、何勘違いしてんの?」
「……っ」
「そもそもさ。高卒で、大して美人でもない、取り柄も何もないあんたが今の拓翔に釣り合うとでも思ってんの?」
里穂の口元に浮かぶ笑みは冷えきっていた。突き放すだけじゃなく、追い詰めることを楽しんでいるような、そんな色を帯びていた。