空に預けた恋を誓う〜エリートパイロットは約束の幼馴染を一途に愛しぬく〜
翌日も、その次の日も──仄香は重いものを抱えたまま出勤し、帰宅すれば息苦しい空気に包まれる日々を繰り返していた。
朝の光も、通り過ぎる飛行機の影も、昼休みのわずかな静けさも、気持ちを軽くするには足りない。
職場では何事もなかったかのように働き、家に戻って家事をこなし、どうすることもできないまま時間だけが過ぎていく。
窓の外で飛行機が離陸していくのを見上げても、以前のように気持ちが引き上げられることはなかった。
そんな日々の中で、里穂は折に触れて拓翔の話を持ち出した。
「今日もフライトで拓翔と一緒だったけど、やっぱりダントツでカッコよくてさ〜。私のことは覚えてないみたいだけど、まあ逆に好都合かな?」
「最近、やたら目が合うの。向こうも私を意識してるのバレバレ〜」
「ここ数日、一緒に行動することも増えて、結構話す機会多いの。もう周りの女の視線がウザいのなんのって」
姉の口からその名前が出るたび、視界がわずかに滲む。こぼれそうになるなる涙を押し戻すのに精一杯で、息を整えることしかできなかった。
最初のうちは、手の中で花の栞を握りしめてやり過ごした。指先に触れる感触が、遠い日の記憶をかろうじて繋ぎとめてくれていた。
青空の下で交わした約束も、そこに込めた想いも、まだ消えていないと信じたくて。
けれど──
里穂の言葉から見えるのは、拓翔が里穂と自然に距離を縮めている現実だった。