空に預けた恋を誓う〜エリートパイロットは約束の幼馴染を一途に愛しぬく〜
「フライト前のブリーフィングで、拓翔がずっと私の隣に居座ってて。着陸後も荷物の確認とか、わざわざ私に聞きにくるの。もう態度が分かりやすくって」
そのひとつひとつの描写が、針のように胸へ突き刺さる。
里穂と拓翔が肩を並べ、笑い合い、自然に距離を縮めていく様子が、まるで目の前にあるかのように浮かんでしまう。
「じゃ、行ってきま〜す」
それだけ言い残し、里穂はヒールを鳴らして玄関を出ていった。扉が閉まる乾いた音が、やけに冷たく耳に残る。
(……嫌……行かないで……)
声にならない叫びは、どこにも届かないまま消えていく。思わず伸ばした手も、空を掴むだけだった。
「仄香」
母の鋭い声が、静まり返った室内を裂く。
「あなたと彼が昔いくら仲が良かろうと、過去は過去よ。無駄な幻想に囚われて、里穂の邪魔をするんじゃないわよ」
久しぶりに向けられた言葉が、容赦なく心を抉る。
すぐそこにいるはずなのに、どれだけ手を伸ばしても届かない──その現実が、胸を強く締めつけた。
幼い頃に交わした約束が、どんどん遠ざかっていく。
(拓ちゃんは……私のこと、忘れちゃったの……?)
そんな思いが、ゆっくりと内側を侵していく。