空に預けた恋を誓う〜エリートパイロットは約束の幼馴染を一途に愛しぬく〜
やがて弁当箱がひとつ、静かに完成する。二人分の蓋を閉じる音が、部屋に小さく響いた。
仄香が黙ってランチバッグに詰め、それを差し出すと、里穂は満足そうに微笑みながら受け取る。
「ありがと〜」
その笑顔は、性格の悪さを微塵も感じさせないほど美しかった。白く整った肌、長くカールした睫毛、上品に震える声──女性なら誰もが羨むほどの美貌。
清純に見えるその姿で、里穂はこれまで何人もの男を惚れさせ、手玉に取り、飽きると平然と捨ててきた。
それでも誰からも責められないのは、彼女が“特別に綺麗”だからだ。
今日も乱れひとつない髪型と服装で、軽く香水を振り直す。ブランドバッグを掴み、鏡の中の自分を確かめて口角をわずかに上げ、満足そうに頷いた。
完璧な美しさと計算高さが共存するその姿に、仄香の胸は羨望と同じくらい、どうしようもない虚しさで締め付けられた。
「じゃ、行ってきまあす」
明るく弾む声が玄関で消える。ドアが閉まると、家の中には急に静けさが落ちた。洗濯機の回る音だけが、どこか遠くで響く。
仄香はしばらく、そこから動けなかった。空っぽの廊下の先をぼんやり見つめ、これまで堪えていた涙が一筋、音もなく頬を伝った。