空に預けた恋を誓う〜エリートパイロットは約束の幼馴染を一途に愛しぬく〜
そのまま踵を返し、仄香は自分に許された小さなスペースに座り込む。
鞄からそっと栞を取り出すと、手の中で、少し色褪せた紙がひらりと揺れた。
(拓ちゃん……どうして……?)
胸の中で声にならない問いが渦巻く。笑った顔や手をつないだ感触、言葉にならない約束の数々が指先にかすかに残りながら、少しずつ色褪せていく。
あの頃の温度は、もう手の中では感じられなかった。
それでも栞と一緒にその想いを手放そうとしても、指先がそれを拒む。握りしめるたびに、思い出も、拓翔への想いも、どうしようもなく自分の中に残ったままだ。
目を閉じ、深く息を吸う。ゆっくりと開けた視線の先には、花の指輪が映った。
かつて鮮やかだった色はくすみ、花弁は乾き、ほんの少し茶色く変色している。その姿を見つめると、あの頃の記憶までも、花と同じように酸化して濁っていくように感じられた。
(私との約束……本当に、忘れちゃったの……?)
声にできない問いは、胸の痛みをいっそう深くする。
どうしてこんなにも、未練がましく縋り付いてしまうのだろう。
どれだけ拓翔への思いと記憶を押し込め、栞を手から離そうとしても、体は拒むようにしっかりとそれを抱き返すだけだった。