空に預けた恋を誓う〜エリートパイロットは約束の幼馴染を一途に愛しぬく〜
(えっ?もう……帰ってきたの?)
約束の時間にはまだ早いはずだ。そう思うより早く廊下に乱れた靴音が響き、何度か物がぶつかるような激しい音が弾けた。
「はぁ!?ちょっと何なの!?──待ってってば、拓翔!」
そこに、戸惑いと怒りが混じった姉の叫びが重なる。そして仄香がリビングの入り口へ視線を向けた瞬間、ドアが蹴破らんばかりの勢いで跳ね上がった。
「……──」
目の前に現れた青年は、初恋のその人だった。
幼い頃の面影を残しながらも、成熟した大人の佇まいをまとっている。
凛とした姿勢に、端正な顔立ち、くっきりとした眉と深みのある瞳。すべてが整い、そこに立っているだけで、自然と目を奪われる存在感放つ。
研ぎ澄まされたその佇まいは、あの里穂でさえ認めるほどに、洗練された雰囲気をまとっていた。
(この人が、拓ちゃん……?ほんとうに…?)
仄香はその場に立ち尽くした。声も出ず、胸にじわりと熱いものがこみ上げる。
何を言えばいいのかも、どうすればいいのかも分からず立ち尽くす。
けれどそこで、ふと違和感に気づいた。
初めての、恋人の実家への訪問。普通なら里穂に連れられて入ってくるはずであろう彼が、彼女を伴わず一人でリビングに立っている。しかもその視線は母でも姉でもなく、仄香ただ一人に向けられていた。
「仄香……?」
絞り出すような声には、明らかな震えが混じっていた。表情には懐かしさと同じくらい、焦りにも似た揺らぎが浮かぶ。
静寂の中、彼はどこか祈るような切実さで問いかけた。