空に預けた恋を誓う〜エリートパイロットは約束の幼馴染を一途に愛しぬく〜
「仄香、だよな……?俺のこと、覚えてるか?」
その真っ直ぐな瞳に見つめられ、長い間閉ざされていた心の扉が、音を立てて崩れ落ちた。目頭が熱くなり、視界が歪む。
仄香はようやく、小さな動きでゆっくりと頷いた。
「拓、ちゃん……」
こらえきれなかった涙が、頬を濡らす。次の瞬間、視界が暗転した。
「……やっと…会えた…!」
気づいた時には、彼の腕の中にいた。記憶よりもずっと大きく、逞しくなった腕が壊れ物のように抱きしめる。その温もりが、長く凍りついていた仄香の心に、ゆっくりと沁み込んでいく。
「──ちょっと、どういうつもり!?」
しかし、ほどけかけた空気を割くように、甲高い声がリビングに響く。
仄香を抱きしめたままの拓翔を見て、里穂の顔がみるみる紅潮していく。怒りで唇をわななかせ、屈辱が入り混じった視線を突き刺してくる。
「今すぐ離れて!何してるのよ!あんた、私の彼氏でしょ!?」
母もまた、すぐに立ち上がる。先ほどまで取り繕っていた表情が一変し、眉を吊り上げて娘と同じ色の怒りを露わにした。
「あなた……!人の家に勝手に上がり込むなりこんな事して、一体どういうつもり!?恥を知りなさい!」
姉と母の怒声に圧倒され、仄香の心臓が大きく跳ねる。
長年染みついた恐怖が、反射のように身体を縛りつける。呼吸すらうまくできず、無意識に指先を強く握りしめることしかできなかった。