空に預けた恋を誓う〜エリートパイロットは約束の幼馴染を一途に愛しぬく〜

「大事な人を守りたいその気持ちを、大切にしなさい」

 その言葉をきっかけに、拓翔は自分の中に芽生えた初恋に気づいた。

 淡い恋心を抱いて過ごす、穏やかな日々。

 けれど、運命は残酷だった。拓翔が小学六年生に上がったその年、仄香の父親が事故で急逝した。

 難しいことは当時の拓翔にはわからなかった。けれどただひとつ、仄香がこの街を去らなければならないことだけは残酷なほど明らかだった。

 別れの日の夕暮れ。いつもの公園で、泣きじゃくりながら言葉を絞り出す仄香を見て、拓翔もまた泣き出しそうになった。けれどここで自分が涙を見せれば、彼女はもっと悲しむ。もっと不安になる。

 だから泣きたい気持ちをぐっとこらえ、一つの約束を口にした。足元に咲いていたシロツメクサで指輪を摘み、仄香の小さな手に握らせる。

「必ずパイロットになって、仄香を迎えに行く。だから、待ってて」
 
 それが、何もできなかった当時の自分が、仄香に遺せた唯一の言葉だった。

 離れ離れになった現実を、拓翔はひとつの目標へと変えて乗り越えた。

 義務教育を終えて高校を卒業した後、迷わず国立航空大学校への道を定めた。

 受験資格を得るには大学での二年の課程が必要で、最短距離を突き進むために地元の国立大学へ進学。周囲がサークルや遊びに興じるのを余所に、父の工場を手伝いながら猛勉強に明け暮れた。

 そして二十歳のとき、数十倍という驚異の倍率を突破し、ついに航空大学校の門を叩いた。

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