空に預けた恋を誓う〜エリートパイロットは約束の幼馴染を一途に愛しぬく〜
航大の課程は常に「脱落」の二文字と隣り合わせだ。一度の操作ミス、一度の体調不良で夢が断たれ、同期が一人、また一人と去っていく。
そのな中でも、拓翔の心が折れることは一度もなかった。
自分の夢を本気で応援し、「拓ちゃんなら絶対になれる」と信じてくれた仄香の存在が、どんな過酷な訓練も、逃げ出したくなるような重圧も、取るに足らないものに変えてくれた。
訓練課程を終える頃には、かつては頼りなかった体躯も百八十センチを超え、精悍さを増した顔立ちで周囲から言い寄られることも多くなっていた。
国内大手の航空会社の操縦席に座り、エリートとして持て囃されるようになっても、心が誰かに揺らぐことはなかった。食事の誘いや華やかな社交の場はすべて丁重に断り、フライトが終われば一人、あの日彼女に渡した指輪と同じ、シロツメクサの押し花を眺める。
だが会えない年月が重なるにつれ、募る想いは喉を焼くような「渇望」へと変わり、いつしか「焦燥」が胸を締め付けるようになった。
夢を叶えたところで、そこに仄香の声がなければ意味がない。彼女の太陽のような笑顔がなければ、この空を飛ぶことに何の価値も見出せなかった。
この十五年。拓翔はただ、重すぎるほどの未練を抱えて、仄香の面影を空の向こうに探し続けてきた。