空に預けた恋を誓う〜エリートパイロットは約束の幼馴染を一途に愛しぬく〜
そんな葛藤の中、それは突然訪れた。
その日のフライトは、羽田発、新千歳行きの便だった。
出発の約一時間前。オペレーションセンターの一角にあるブリーフィング室で、コックピットクルーと客室乗務員による合同の打ち合わせが行われる。
機長が安全事項やフライトの揺れの予想を淡々と述べる中、副操縦士として隣に座っていた拓翔は対面に座る客室乗務員たちの列に、その女を見つけた。
「本日の客室を担当いたします、桐生です。よろしくお願いします」
一縷の隙も無く美しく整えられた顔。清純さを装いながら、どこか計算高さの透ける笑みを浮かべて頭を下げた女。
(桐生……?)
記憶とは違う苗字。だがその顔立ちと口角の上げ方を見た瞬間、拓翔の心臓が冷たい氷に触れたかのように鋭く跳ねた。
──藤田里穂だ。間違いない。
十五年前、クラスの頂点に君臨し、自分を「貧乏人」と執拗に嘲り見下していた傲慢な少女の成れの果て。苗字が違うのは、おそらく今は母親の姓を名乗っているからなのだろう。
桐生里穂は、一見すれば優秀な客室乗務員に見える。だが規定の範囲内とはいえ、他の乗務員より明らかに艶のあるリップや、手入れの行き届いた長い爪。そして、テーブルの下に置かれた職務には不釣り合いな職務には不釣り合いな高級ブランドのバッグ。
その端々に、「猿山のボス」だったあの頃と変わらない虚栄心が透けて見えていた。