空に預けた恋を誓う〜エリートパイロットは約束の幼馴染を一途に愛しぬく〜

 ふと気づくと、里穂は拓翔をじっと見つめていた。目が合うと、彼女を知らない男なら誰もが見惚れてしまうような、慈愛に満ちた完璧な笑顔を向けられる。

 そこに、自分を罵っていたあの頃の様子は微塵もない。里穂にとって、今目の前にいるのは「加賀美拓翔」という名前の、若くして大手エアラインの操縦席に座る好物件に見えているのだろう。

 だがどれほど美しく取り繕おうとも、拓翔には、獲物を品定めする女豹の目にしか見えなかった。これまで何度も言い寄ってきた、欲張りな女たちの目と何ら変わりはない。


 その後ブリーフィングが終わり、クルーたちが機体へ向かうために席を立つ。その中に里穂の姿がないことに気づき、忘れ物をしたふりをして元の道を辿ると、そこでその女の「本性」を目の当たりにした。

 人気のなくなった部屋の外。廊下の角の向こうから、低く威圧的な女の声が聞こえてくる。

「……だから、何度も言わせないでくれる?離陸後のドリンクサービス、あなた一人でメインを回って。あと、ギャレーの在庫チェックと補充も全部やっておくのよ」

「えっ……ですが、打ち合わせでは桐生さんの担当だと──」

「はあ?」

 情け容赦のない声。里穂は後輩の言葉を遮り、圧をかける。

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