空に預けた恋を誓う〜エリートパイロットは約束の幼馴染を一途に愛しぬく〜
「担当“じゃない”からやらないの?新人のくせに、仕事を選べる立場のつもり?私はあなたに『チャンス』をあげてるのよ。感謝して働きなさいよ」
「す、すみません……」
「ただでさえ足手まといなんだから、自ら仕事を取ってでも戦力になりなさいよね。……はーあ。ただでさえ口うるさいお局ババアと一緒ってだけで萎えるのに、こんな使えない新人がいるとか最悪なんだけど。本当に運が悪いわ」
他の乗務員から死角になる位置で、里穂が吐き捨てる。弱い立場の相手を踏みつけるその在り方は、あの頃と何ひとつ変わらない。歪みきった本性が、そのまま滲み出ていた。
激しい嫌悪感に吐き気を覚えながら、拓翔は一度その場を離れた。だが機体に乗り込む直前、態度を一変させた里穂が親しげに声をかけてきた。
「加賀美さん」
自然な仕草で距離を詰め、潤んだ瞳を向けてくる。
「今日はご一緒できて嬉しいです。フライト中、頼りにしていますね?」
本性を知らない男なら、容易く足をすくわれるだろう。整いすぎた美貌と、計算し尽くされた色気。里穂は自分の価値も、その使い方も知り尽くしている。
通りかかる乗客たちも彼女のそばを通るたび、無意識に視線を奪われている。
(変わっていないな、何も)
どれだけ周囲が賞賛しようと、嫌悪は揺るがない。さきほどの後輩への傲慢な振る舞いを思えば、一番近くで、誰が犠牲になっているかは火を見るより明らかだった。
──それでも。
(ここで感情的になるのは、得策じゃない)