空に預けた恋を誓う〜エリートパイロットは約束の幼馴染を一途に愛しぬく〜
里穂はどう見ても料理などできない派手なネイルが施された指先で、可愛らしくラッピングされた弁当を差し出す。
(家庭の味って……どの口が言うんだか)
本当に、人の地雷を踏むのがうまい女だ。母親が居ないと知っていて、よくもそんな言葉を吐けるものだ。
そんな毒を喉元で止め、拓翔は「ありがとう」と笑ってそれを受け取った。
(どうせ、デパ地下かどこかの惣菜を詰め替えただけだろう)
そう思いながら蓋を開けた瞬間、拓翔の目は釘付けになった。
そこにあったのは、派手な里穂のイメージとは正反対の、驚くほど素朴なおかずたちだった。けれど一つひとつが丁寧に、手間を惜しまず作られたことが伝わってくる。
さらに拓翔の意識を奪ったのは、隙間を埋めるように詰められた「タコさんウインナー」だった。その形は独特で、ウインナーの限界まで細かく切り込みが入れられ、十数本の足が広がっている。
(……足の多いウインナー……これって……)
脳裏に、子供の頃の記憶が蘇る。
父に教わりながら、拓翔が初めて挑戦した不格好な「タコさんウインナー」。切り込みを入れすぎて足が十本以上になってしまい、恥ずかしさで気まずかったそれを、仄香が「イカさんウインナー、かわいいね!」と笑ってくれた。
その一言で気持ちが軽くなり、二人で食べ合った、あたたかな思い出。
「………」
震える手で、その一つを口に運ぶ。少し焼きすぎた香ばしさが、あの頃の優しい記憶をさらに強く刺激した。
(仄香……君が、作ってくれたのか)