空に預けた恋を誓う〜エリートパイロットは約束の幼馴染を一途に愛しぬく〜
思わず胸が熱くなる。仄香の気配に触れられた喜びと、彼女がどんな思いでこれを作らされたのかという、抉るような痛みが同時に押し寄せる。
里穂が外で着飾り、自分に媚びを売っているあいだ、仄香は暗い家で里穂の「偽りの家庭的アピール」のために、この弁当を用意させられていたのだ。
「どう?拓翔の口に合うかしら?」
里穂の顔を盗み見ると、自信を含んだ笑みを浮かべている。
「うん。……すごく、美味しいよ」
心からの言葉だった。けれど、「ありがとう」という感謝の裏で、拓翔の中に残っていた最後の手加減が消えた。
拓翔は一つの覚悟を決め、その日の帰り道、意図的に声を柔らかくして里穂の名前を呼んだ。
「君とのこの先のこと、ちゃんと考えたいと思ってる。俺たちもいい歳だし。……近いうちに、ご家族に挨拶に行かせてもらえないかな?」
そう言った瞬間、里穂の顔が、期待と高揚に満ちてぱっと華やぐ。
「!……ええ、もちろんよ!拓翔を家族に紹介できるなんて……すごく楽しみだわ」
頬を上気させ、分かりやすいほどの優越感に浸っている。
「俺もだよ。……楽しみだ」
その言葉の裏にある黒い本心に気づくこともなく、里穂は弾んだ声で日時を決めていく。
(もう少しだ)
十五年。約束を胸に空を飛び続け、ずっと探してきた。仄香のいる場所まで、あと、たった一歩。
隣で話し続ける姿に視線を向けることなく景色の先だけを追い、強い力でハンドルを握りしめた。