空に預けた恋を誓う〜エリートパイロットは約束の幼馴染を一途に愛しぬく〜
「どうした?」
「あの家に……置いてきちゃった。花の栞も、鞄の中に……」
大した荷物はない。仄香が持たされていたのはなけなしの生活費と、友達もいないスマホくらいだ。けれど、この世界で唯一の宝物だったあの栞だけは、何にも代えがたい。
拓翔は「そうか……」と低く呟くと、少しの間考え込むように目を伏せた。けれどすぐに顔を上げ、力強い眼差しを仄香に向ける。
「だけど俺は、あんな家には戻ってほしくない」
「え……」
「どうしても必要なら、後で俺が取りに行く。だから仄香は、ここにいてほしい」
きっぱりと言い切った拓翔に、仄香の瞳が大きく揺れた。
「ここって……」
「言葉通りだよ、仄香。ここで俺と一緒に暮らそう。もう二度と、誰にも君を傷つけられたくないんだ」
拓翔の真っ直ぐな思いやりが、痛いほどうれしい。けれど仄香の頭の中では、「一緒に暮らす」という言葉だけがぐるぐると回り続けていた。
「一緒に……暮らす……?私が、拓ちゃんと……?」
「ああ。もちろん、結婚することを前提に。これからはずっと、仄香にそばにいてほしいんだ」
「………」
あまりにも唐突で、仄香の思考は完全に止まった。