空に預けた恋を誓う〜エリートパイロットは約束の幼馴染を一途に愛しぬく〜

 数時間前まで冷たいキッチンで罵倒に耐えていただけの自分が、今は夜景の広がる部屋の真ん中で、初恋の人から一生の約束を求められている。

 現実の振れ幅が大きすぎて、頭がまったく追いつかない。

「けっ、こん……?」

 かろうじて絞り出した声に、拓翔は少し困ったように笑った。

「……さすがに焦り過ぎたな。困らせてごめん」

 そう言って苦笑を浮かべながらも、その眼差しに迷いはない。

「だけど俺は、最初からそのつもりで仄香を迎えに行った。結婚については、すぐじゃなくていい。仄香が受け入れてくれるまで、俺はいくらでも待つつもりだよ」

「………」

「だけど、俺のためにもここにはいてほしい。……な?」

 その一言に込められた想いがまっすぐすぎて、仄香は視線を外せなかった。

 これまで誰かに大切にされたことなんて、ほとんどなかった。ぞんざいに扱われることには慣れていたのに、拓翔から向けられる優しさはあまりにも甘くて、少しだけ怖い。

(でも……)

 だけどそれ以上に、心が温かくなった。

 仄香は涙で濡れた頬を赤く染めながら、こくりと小さく頷いた。

 ──それ以外の反応をする余裕なんて、もう、どこにも残っていなかった。

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