空に預けた恋を誓う〜エリートパイロットは約束の幼馴染を一途に愛しぬく〜
朝の冷たい空気をそのまま連れてきたように、仄香は勤務先の旅行代理店のフロアへ足を踏み入れた。受付や営業デスクはまだ閑散としている。
「……おはようございます」
声を落とし、形だけの挨拶をして自席へ向かう。
デスクに着くとすぐにパソコンを立ち上げ、引き出しから手帳を取り出した。今日の予約確認、日程調整、航空券や宿泊手配のリストを順に確認していく。
頭の中で優先順位を素早く組み立て、業務の流れを静かに整理する。社員たちがちらほら出社し始めても仄香はほとんど視線を上げず、目が合えば最低限の笑顔で会釈を返す。
始業のチャイムが鳴ってまもなく、案の定声が飛んできた。
「桐生さん、この団体のホテルの空室確認、急ぎでお願いできる?」
「分かりました」
仄香はすぐに資料を開き、予約管理システムを検索する。空室状況と料金プランを確認しながら顧客の希望条件を照らし合わせ、必要な修正を加える。数分でデータを整理すると担当者へメールで送信し、コピーもプリントしてファイルに差し込んだ。
するとすぐ、別の声が重なる。
「桐生さん、午後から企業の客先訪問あるから、提案内容と手配状況まとめておいて」
「はい」
依頼内容をもとに手配の進行を整理し、行程や詳細を順に確認していく。搭乗日程や座席状況に加え、移動手段やタイムスケジュールも見直し、不備があればその都度整えた。
どの作業も説明を受けるまでもなく理解し、淡々と処理していく。