空に預けた恋を誓う〜エリートパイロットは約束の幼馴染を一途に愛しぬく〜
「……あったかい」
そっと湯に浸かると、じんわりとした熱が全身に広がっていく。
ヘッドの付け替えられたシャワーはやわらかく水を広げ、ボディーソープも、水で薄めずそのままの濃さで使える。
誰かが使い古したもの、誰かが捨てたもの。そんな余り物だけで構成されていた自分の世界に、拓翔は最高のものを与えてくれる。
急かされることもない静かな時間。湯の音と、自分の呼吸だけがゆっくりと満ちていく。
「……っ」
不意に、視界が滲んだ。
幼い頃から、風呂場では何度も泣いてきた。母や姉の前で涙を流せば「鬱陶しい」と罵倒されるだけだったから、誰にも見られないこの場所で、涙をシャワーの水でごまかしながら声を殺してきた。
けれど今、頬を伝って湯船に落ちる涙は、あの頃の悲しみとはまったく違っていた。
誰かが自分を大切に扱ってくれることが、これほどまでに幸せなことだなんて知らなかった。
拓翔が選んでくれた服も、彼が整えてくれた風呂も、その温かさも。そのすべてが、彼の「愛」そのもののように感じられて、すごく嬉しかった。
仄香は声を上げず、ただひたすらに、溢れ出す涙を流し続けた。