空に預けた恋を誓う〜エリートパイロットは約束の幼馴染を一途に愛しぬく〜
(……すごく、気持ちいい……)
まどろむような心地に引き込まれ、意識がふわりと浮かびかけた、そのとき。
ふいに動きが止まり、ドライヤーの音が途切れた。
「終わったよ」
「あ、ありがとう……」
夢から覚めたように瞬きをし、いつもよりずっとさらさらに整えられた髪を無意識に撫でる。その様子を見つめていた拓翔が、静かに声をかけてきた。
「……仄香。手、見せて」
「え?う、うん……」
素直に手を差し出したものの、拓翔がそれを両手で包み込んでまじまじと見つめてくるので、仄香は次第に居心地が悪くなってきた。
明るい場所で晒された仄香の手は、お世辞にも綺麗とは言い難かった。
実家で毎日押し付けられていた雑務のせいで、あかぎれやひび割れ、指先のささくれが目立っている。里穂や母のように美しくネイルを整える余裕なんて、一度もなかった。
「……た、拓ちゃん……あの、恥ずかしいから……」
耐えられなくなって名前を呼ぶと、拓翔の瞳が、深く暗い色に沈んだ。
「……ごめんな、仄香」
「え……?」
「もっと早く、迎えに行けばよかった」
掠れた声でそう言うと、彼は仄香の手をそっとすくい上げ、自分の唇へと寄せた。