空に預けた恋を誓う〜エリートパイロットは約束の幼馴染を一途に愛しぬく〜
優しく紡がれる言葉に、仄香はじっと耳を傾ける。
「君がやりたいって言うことを、無理やり抑え込むようなことはしたくない。……その上で、一人の男としての本音を聞いてほしいんだけど」
言葉を選ぶように一度間を置いてから、拓翔は静かに続けた。
「……今の職場の、退職を考えてみてくれないか」
途端、仄香の手がぴたりと止まった。
「え……?」
「強制はしない。でも、あの家族から完全に離れるには物理的に接点を断つ必要がある。今の職場はあの二人も知っているだろう? 母親や里穂が待ち伏せする可能性も、無いとは言えない」
「……」
「俺はもう、仄香が傷つくところは見たくないんだ」
声音は静かだったが、その奥には抜き差しならない決意が滲んでいた。
仄香はそっと、たたみかけの衣服に視線を落とした。
もう母や姉と関わりたいとは思わない。会わずに済むなら、そのほうがいい。それでも、急にすべてを断ち切ることへのためらいが、胸の中で引っかかる。
「でも、急に辞めるのは職場に迷惑がかかっちゃうし……」
「わかってる。……だけど、ごめん。俺にとっては仄香の心の方が、ずっと大事だから」
間を置かずに返ってきた声は、どこまでも仄香への思いやりに満ちていた。