空に預けた恋を誓う〜エリートパイロットは約束の幼馴染を一途に愛しぬく〜
「やっぱり、覚えててくれたんだ」
拓翔はバターナイフから手を離し、一呼吸おいてから静かに言葉を継ぐ。
「里穂が持ってきた弁当、あれは仄香の手作りだろ。……『イカさんウインナー』、入れてくれてたよな」
「……気づいて、くれたの……?」
「あいつが弁当持ってきた時点で怪しいとは思ってた。けど、それを見た瞬間に確信した」
一瞬だけ視線を落とし、それからまっすぐ仄香を見つめる。
「仄香が近くにいるって。ちゃんと覚えててくれてるって。だから俺は迷わず、君を連れ出しに行くって決められた」
「……っ」
視界が急激に滲んでいく。気づいて、少しでも思い出してくれたら──そんなかすかな願いを込めて入れたものに、ちゃんと見つけてくれた。あの小さな想いごと、受け取ってくれた。
そう思った瞬間、こらえきれずに涙がこぼれ落ちる。
「……ありがとう……拓ちゃん……」
止まらない涙を拭っていると、拓翔は席を立ち、隣に寄り添って肩を抱き寄せた。
「俺の方こそ。……ずっと待っててくれて、ありがとう」
涙を拭う手はどこまでも優しくて、その温もりに触れるほど、ますます涙が止まらなくなる。
二人のあいだにあった時間も想いも、すべてが重なって、こうして何気ない朝食の中に溶け込んでいる。
窓から差し込む朝の光の中で、そのささやかな温もりは、確かなかたちを持ってそこにあった。