空に預けた恋を誓う〜エリートパイロットは約束の幼馴染を一途に愛しぬく〜
それからの数日は驚くほど静かで、ゆるやかな時間に満たされていた。
一緒に目覚めて朝食を囲み、夜になれば彼の帰りを待ち、何気ない会話を交わして眠りにつく。ただそれだけの、何気ない日常。その中心に拓翔がいるという事実が、こわばっていた心を少しずつ緩めていった。
今朝もまた仕事へ向かう拓翔を見送り、静まり返った部屋でひとりの時間を過ごす。
タワーマンションの上層階から見える窓の外には広大な空が広がり、時折、風が建物を撫でる音がかすかに届く。
最初のうちは、何もしなくていい時間に戸惑いを隠せなかった。
何かしなければ、役に立たなければ──そんな思いに急かされるように部屋の中を行き来するものの、最新の設備が整ったこの家では、仄香が無理に動く必要はほとんどない。
汚れた食器は食洗機が洗い上げ、時間になれば自動掃除機が床の埃を吸い取り、水拭きまでこなす。洗濯乾燥機はボタンひとつでタオルをふわりと仕上げ、料理に至っては、具材を入れておくだけで電気圧力鍋が一品を完成させてくれる。
かつて家事に追われていた時間が嘘のように、手持ち無沙汰な時間ばかりが過ぎていく。
それでも、拓翔はどんなに小さなことにもきちんと気づいてくれる。
シャツにアイロンをかければ「助かるよ」とはにかむように笑い、帰宅に合わせてお茶を淹れれば「美味しい」と安らいだ顔を見せてくれる。
たった一言の「ありがとう」が、こんなにも優しくて、心を満たしてくれるものだとは知らなかった。
(幸せって、こういう気持ちなんだ……)
長い間忘れたいた感情を、少しずつ取り戻していく。
拓翔から注がれる惜しみない愛情をためらわず受け取れるようになったことが、何よりもうれしかった。