空に預けた恋を誓う〜エリートパイロットは約束の幼馴染を一途に愛しぬく〜
その日の夜も、仄香は玄関の鍵が開く音を聞くと、軽やかな足取りで彼を迎え入れた。
待ちわびた人が帰ってきたことで仄香の心も晴れ、部屋にやわらかな温もりが満ちていく。その空気の中で、二人は仄香が用意した夕食を囲む。
「……あ、これ、すごく美味い」
ふいに拓翔がこぼした独り言のような呟きに、仄香の表情がぱっと花が咲いたように華やいだ。
「本当?よかった……。初めて作ってみたから、口に合わなかったらどうしようって、ちょっとドキドキしてたの」
テーブルに並んでいるのは、キッチンにあった電気圧力鍋を存分に活用した『牛すね肉と根菜の赤ワイン煮込み』だ。
じっくりと煮込まれたすね肉はほろりとほどけるほど柔らかく、赤ワインとフォンドボーのコクがしっかりと染み込んでいる。にんじんやじゃがいもは形を保ったままやさしい甘みを残し、ひと口ごとに深い旨味が広がっていく。
食材はネットスーパーが玄関先まで運んでくれるし、掃除や洗濯といった他の家事は便利家電たちがほとんどこなしてくれる。自由な時間が増えたおかげで、料理に手間をかけられる余裕が生まれていた。
ただ材料を入れてスイッチを押すだけではなく、肉の表面を丁寧に焼いて旨味を閉じ込めたり、野菜の面取りをして形が崩れないようにしたり。