10年越しの溺愛——御曹司は私を逃さない
「本日より、星川商事は黒崎コーポレーション星川支社として再編されます。併せて私が支社長、そして黒崎グループ代表取締役を務めます」
まるで、この場にいる全員の上に静かに覆いかぶさるような圧力。
私は思わず視線を逸らそうとしたのに、なぜかそれができなかった。
目を離してはいけないと、本能的に感じてしまったのかもしれない。
「今回の買収について、簡単に説明します」
彼――黒崎蒼は、感情をほとんど感じさせない声で淡々と続ける。
その落ち着き払った口調が、かえって現実味を強くしていた。
「星川商事は本来、非常に優秀な企業です。しかし前体制において、外部に出れば会社の信用を大きく損なう可能性のある問題が発生していました。我々はそれを表に出すのではなく、企業として守る道を選びました」
守る――その言葉が、胸の中で引っかかる。
守る、というよりも、これはただライバルだった私たちを飲み込んだだけなんじゃないの?
そんな疑問が頭をよぎる。
けれど同時に、その裏に“何か”があったのだという事実も否定できなかった。