10年越しの溺愛——御曹司は私を逃さない
私たちが知らされていない問題。
もしそれが本当に存在していたとしたら――。
考えれば考えるほど、足元が揺らぐような不安が広がっていく。
「皆さんにはこれまで通り、安心して働いてもらいます。環境は変えません。ただし、結果は求めます」
静かで、冷たい。
突き放すようにも聞こえるその言葉なのに、不思議と説得力があった。
無理やり従わせるのではなく、ただ事実だけを突きつけてくるような強さ。
だからこそ、逆らえない。
気づけば私は、彼の言葉一つ一つに引き込まれていた。
怖いはずなのに。警戒しなければいけない相手のはずなのに。
どうしてか、目が離せない。視線を外したら、何か大切なものを見落としてしまう気がしてしまう。
「早速だが、今月末に海外の会社との新規契約を結ぶつもりだ」
――黒崎蒼が言ったその言葉に、私たちは一瞬息を呑んだ。
今日からすべてが変わる――そう思ってはいた。けれど、それはせいぜい新年度が始まるからであって、こんなふうに一瞬で日常が塗り替えられるような変化は、想像すらしていなかった。