10年越しの溺愛——御曹司は私を逃さない
翔にもらった婚約指輪は、捨てることもできず、かといって身につけることもできなくて、ベッド脇のサイドテーブルにそっと置いた。まるで自分への罰みたいに。忘れないための、戒めみたいに。
「もう恋はしない」「どうせまた振られる」「私には仕事しかない」――そんな言葉を、何度も何度も心の中で繰り返して、自分に言い聞かせた。
それはいつの間にか、ただの決意じゃなくて、呪いみたいになっていた。自分で自分を縛りつけるための、逃げ道をなくすための、言葉。
「白石」
ふいに名前を呼ばれて、意識が一気に現実へと引き戻される。
「な、なに?」
顔を上げながら、どこか上ずった声が出た。
今の私は、ちゃんと笑えているだろうか。変に歪んだ表情になっていないだろうか。そんなことばかりが気になってしまう。
「何かあったら、いつでも話聞くから。俺は、ずっとお前のこと見てるよ」
井口のその言葉は、思ってもみなかったくらいまっすぐで、一瞬、意味を理解するのに時間がかかった。