10年越しの溺愛——御曹司は私を逃さない



「俺の悪い癖だな。どうしても大事なことはとことん調べる癖がついてる」


そう言って、社長は少しだけ自分に呆れたように視線を外し、首元に手をやった。


「悪い」


その謝罪は、いつもの社長の声じゃなかった。少しだけ低くて、どこか不器用で。しかも、ほんのわずかに上目遣いでこちらを見るなんて、反則だと思った。

……え、なに今の。いつも自信満々で、全部分かってるみたいな顔してる人なのに。そんな顔、するんだ。

胸の奥が、嫌なほど跳ねる。

それにしても、大事なことって。さっきの言葉が引っかかる。


「私も佐藤さんも、過去に会社に不利益になるようなことがあったら担当から外していたってことですか…?」


声が少し震えていた。十分にあり得る話だと思ったからだ。仕事の世界なら、それが正しい判断だ。別に、はっきり言ってくれてもいいのに。「足手まといだ」とか、「リスクがある」とか、そういう風に。むしろその方が、納得できる気がした。


「いいですよ、別に…社長には散々迷惑かけまくっていますし、情けないところたくさん見られてるし」


言いながら、胸がきゅっと痛くなる。もしかしたら今ここで、私は“担当外し”を言い渡されるのかもしれない。そう思ったら、喉が詰まって、息がうまくできなかった。なのに社長は、そいうじゃなくてだな…といい淀んでいる。


「そうじゃないなら、なんですか…?」


絞り出すように聞くと、ようやく口を開く。


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