10年越しの溺愛——御曹司は私を逃さない
「……気に食わない」
「え?」
「嫌なんだよ。お前が、昔の男と一緒に仕事すんのが」
社長はそれだけ言うと、顔をそむけた。
……は?今、なんて?
意味が分からなくて、じっと見つめていると、社長は片手で顔を覆うようにして隠した。そのくせ、耳だけがはっきりと赤い。
チラ、とこちらの様子をうかがう視線が一瞬だけ交わる。その瞬間、心臓が嫌なほど強く跳ねた。
キュン、なんて生易しいものじゃない。もっと、苦しくて、落ち着かなくて、どうしようもない感情。
「……なんですか、それ。どういうことですか、社長」
声がかすれる。聞きたいのに、答えが怖い。なのに期待してしまう自分がいて、余計に苦しくなる。
社長はしばらく黙ったまま、顔を隠したまま、小さく息を吐いた。
「……だから」
ようやく絞り出すように言う。
「仕事だとか合理性とか、そういう話じゃない」
一度言葉を切って、視線だけこちらに戻す。
「独占欲だよ。悪いか?」
心臓の音だけが、やけにうるさい。
――今、この人、何を言ったの?理解したくないのに、理解してしまう。
胸の奥が熱くなって、呼吸がうまくできない。
社長はすぐに視線を逸らして、いつものように低く言う。
「……以上」
でもその耳は、まだ赤いままだった。