10年越しの溺愛——御曹司は私を逃さない



溺愛って、誰が誰を?問題って何の?混乱したまま、ただ心臓の音だけがやけに大きく響いている。ドキドキしているのが、自分でも分かる。社長の胸に触れている頬が、やけに熱い。


「とりあえず、黒崎グループとは敵対関係にはなりたくありませんので。これからも、よろしくお願いします」


翔の声は、いつものビジネスの顔に戻っていた。その言葉を最後に、遠ざかっていく足音が聞こえる。

扉が開いて、閉まる音。空気が少しだけ軽くなる。

けれど私はまだ、社長の腕の中にいた。身動きが取れない。心臓だけがずっと騒がしい。ドクドクと速くなっていく鼓動が、隠せないくらいはっきりしている。

……近い。頬が触れている場所から、体温がじわじわと伝わってくる。


「やっぱり担当変えるか」


頭上から落ちてきた声と、小さな舌打ちに、私は一気に現実に引き戻された。


「わっ、私ですか!?私を変えようとしてます!?」


反射的に身体を離しながら叫んでしまう。

いやですよー!と半泣きに近い声が出る。冗談じゃない、本気で困る!

すると黒崎社長は、額に手を当てて、深く息を吐いた。


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