10年越しの溺愛——御曹司は私を逃さない
美織ちゃんの言う通り、最近の私は少しおかしい。
毎朝、髪型を変えてみたり、今まで面倒だと思っていたアクセサリーを選んでみたり、鏡の前でアイシャドウの色を悩んだりしているのも、全部、その人にほんの少しでもいいなって思ってもらえたら、なんていう、柄にもない理由からで。
あー、もう、本当に恥ずかしい!29歳にもなって、こんなふうに恋に浮かれているなんて!
そもそも私は、もう恋なんてしないって、自分で宣言していたはずなのに!
それをあっさり覆してしまっている自分が、情けないやら可笑しいやらで、どうしたらいいのかわからなくなる。
こんなアラサー女の恋愛事情なんて、美織ちゃんからしたらきっとどうでもいい話だろうに、なんて思っていたのに、「よかったですねぇ、白石さん」と、美織ちゃんはまるで自分のことみたいに嬉しそうに、それでいて少し泣きそうな顔でそう言った。
「白石さんが誰よりも仕事頑張ってて、素敵な人だってちゃんと知ってるので、私…絶対、白石さんには幸せになってもらいたいって思ってたんですよ?」
「…美織ちゃん」
「恋愛はタイミングって言いますけど。本当にそうですよね。佐藤さんとは上手くいかなかったかもしれないけど、今度こそ大丈夫ですよ」
優しく背中を押すように続けられた言葉に、思わず視線が揺れる。
「そう、かな…」
自信なんて、どこにもなかった。