10年越しの溺愛——御曹司は私を逃さない
今日、朝の様子はどうだった?顔色は悪くなかった?ちゃんと見ていたはずなのに、記憶を必死にたどる。でも、特に異変なんて感じなかったはずだ。いつも通りで、むしろ少し忙しそうなくらいで。だからこそ余計に分からない。どうしてこんなことに。
焦りと不安に背中を押されるように、私は思い切ってドアノブに手をかけ、そのままゆっくりと扉を開けた。部屋の中は真っ暗で、カーテンも閉まっているのか外の光もほとんど入ってこない。その暗闇の中で、ぼんやりとベッドの上に横たわる影が見えた。
「…っ、社長!」
次の瞬間にはもう体が勝手に動いていて、私はベッドに駆け寄っていた。
近づいてみると、社長は苦しそうに息をしていて、肩が小さく上下している。その様子を見た瞬間、頭が真っ白になる。
どうしよう、これ大丈夫なの?
そんな言葉がぐるぐると頭の中を回るばかりで、何をすればいいのか一瞬分からなくなる。でもそのまま立ち尽くしているわけにはいかない。額にはびっしりと汗が浮かんでいて、顔は異様なほど赤い。明らかに普通じゃない。
とにかく熱を測らないと、そう思って視線をさまよわせると、枕元に体温計が置いてあるのが目に入った。きっと自分で測ったのだろう。
私は震える手でそれを手に取って電源を入れると、表示された数字を見て息を呑んだ。39.3。
「…高い」
こんな高熱で、こんな状態で、一人でここにいたなんて。
「社長、ごめんなさい。ちょっと失礼しますね」
小さくそう声をかけてから、私は意を決して手を伸ばした。スーツのまま横になっている社長の胸元に触れて、上から順にシャツのボタンを外していく。指先がわずかに震えているのが自分でも分かる。