10年越しの溺愛——御曹司は私を逃さない
「……しょうがない、よね」
小さく呟いて、覚悟を決める。ゆっくりと手を伸ばして、さっき途中まで外したシャツのボタンにもう一度指をかける。指先が震えているのが自分でも分かる。それでも一つずつ外していくたびに、露わになっていく肌にどうしても意識が引っ張られてしまう。
こんな近くで、こんなふうに触れるなんて、普段なら絶対にありえない距離で、くらくらしそうになる。でも今はそんなこと言ってる場合じゃない。ぐっと唇を引き結んで、最後のボタンを外すと、そっとシャツを肩からずらした。
「社長、少し体起こしますね」
できるだけ優しく声をかけながら、背中に手を回して支える。触れた体は驚くほど熱くて、その体温に一瞬ひるみそうになる。それでもしっかりと支えて、濡れたシャツを丁寧に脱がせていく。
こんなにも弱っている姿を見るのは初めてだ。私が、社長を守らなきゃ。
ようやくシャツを脱がせ終えると、タオルでそっと汗を拭き取る。少しでも楽になるように、冷えないようにと気を遣いながら、一つ一つ丁寧に。大丈夫ですからね、と自分に言い聞かせるみたいに、小さくそう呟く。
その間も社長の呼吸は浅くて苦しそうで、途切れ途切れに漏れる息がやけに耳に残る。
「っ、はぁ…」
「…。」
…どうしよう。こんなときに、本当に本当に不謹慎だって分かってるのに――目の前の社長の、熱を含んだ吐息、色気にあてられて、私のほうがどうにかなってしまいそうだった。
体がつらいのか、社長は両手を後ろについて体を支えている。首筋を汗がゆっくりと伝っていくのが見えて、思わず息を呑む。私の想像以上に鍛えられたしっかりとした体つきに、頭がぼんやりしてしまう。