10年越しの溺愛——御曹司は私を逃さない
社長は甘く、梨沙、と名前を呼んでもう一度深いキスをする。下唇を吸われて、歯の裏をなぞられて、ピチャピチャと唾液の混じる音と激しい吐息が部屋に鳴り響いている。
熱に浮かされているのは社長なのか、それとも自分なのか分からなくなるほどで、理性の糸が今にも切れそうだった。
だめ、梨沙…!流されちゃ、だめ…!
必死にそう思った、そのとき。
「熱い…」
かすれた声が耳に入って、一気に現実へ引き戻される。
そうだ…!熱…!
私はハッとして体を起こすと、今度は私が社長を押し倒す。驚いて目を見開く社長に「安静にしててください!」と声を荒げた。
さっきまでの自分の動揺を振り払うように、必死だった。
なに流されてるの、私!恥ずかしい!
今私は顔が真っ赤だろう。でも、そんなことも気づかれたくない。流される女だと思われたくない!
「梨沙…?」
「~~~っ、おかゆ作ってきます!」
それだけ言うのが精一杯で、私は勢いのまま部屋を飛び出した。扉を閉めた瞬間、床に崩れ落ちる。
「…何してるの、私」
さっきの距離、さっきの熱、さっきの呼吸。全部、頭から離れない。
こんなはずじゃなかった。介抱するだけのつもりだったのに、どうしてこんなことになってるのか分からない。こんな形で、社長とキスしたいんじゃなかった。それなのに、思い出すだけでまた顔が熱くなる。
「……私まで、熱あるのかな」
呟いて、ぎゅっとスカートを握る。
社長…なんであんなことしたんですか?私のこと、どう思ってるんですか?
社長を上裸のまま布団に寝かせたことに今更気づいたけれど、戻る勇気はなかった。