10年越しの溺愛——御曹司は私を逃さない

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おかゆを作り終えた私は、それをそっとお盆に乗せて社長の部屋へ向かった。

扉の前で一度だけ深呼吸をしてから中に入ると、規則正しいスースーという寝息が聞こえてきて、少しだけ胸の力が抜ける。

よかった、少なくともさっきよりは落ち着いているみたい。おかゆは作ったけれど、今は無理に起こさないほうがいいのかもしれない。

そう思ってテーブルの上にそっと置き、ベッドへ視線を移す。

熱のせいなのか、社長の顔はまだ赤みが残っていて、額にはうっすらと汗が浮かんでいた。乱れた前髪が眉間にかかっていて、少しだけ苦しそうな表情に見える。その前髪をそっと指先でよけた瞬間、ゆっくりとまぶたが動いた。


「…梨沙?」


掠れた声で名前を呼ばれて、心臓が跳ねる。
さっきの出来事が一気に蘇って、顔が熱くなるのが自分でも分かった。距離の近さ、触れられた感覚、呼ばれた声の温度まで思い出してしまって、まともに視線を合わせられない。


「どうした?」


そう問いかけられても、どうしたもこうしたもない。完全に固まってしまっている私を見て、社長は少し困ったように眉を寄せると、ゆっくりと言葉を続けた。


「なにも覚えてないんだが、もしかして何かしたか?」


その一言に、思考が一瞬止まる。


「え…」


覚えてない?あれほど熱っぽい声で名前を呼んで、距離も近くて、あんなに――あんなにキスしてきたのに!?


「おっ……覚えてないんですか!?」


さっきまでの自分の動揺と恥ずかしさが一気に行き場を失って、頭の中が真っ白になる。あれ全部、熱のせい?それとも、夢でも見てたみたいな状態だったってこと?信じられない!


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