10年越しの溺愛——御曹司は私を逃さない
深夜のオフィスで、存在感だけで胸がどきりとする。手に汗をかきながら資料を広げて報告した。
「海外銀行の送金システムと相手先の確認はほぼ完了です。ただし、最終承認に向けて再チェックが必要です」
彼は資料をちらりと見て、微かに眉を寄せた。
「ミスは許されない。抜けはないか」
息が詰まる。頭の中でチェックリストを走らせながら、私は精一杯落ち着いた声で答える。
「すべて確認済みです。新たな問題が出た場合は、即座に報告します」
社長は少しだけ視線を落とし、低い声で言った。
「数字だけではなく、君自身の判断で動けるかが重要だ。理解しているな?」
理解している――言葉では簡単に言えるけれど、心臓はまだドクドクしている。
怖い、なのに、なぜか彼の目から目が離せない。
胸の奥がじんわり熱くなるのを感じ、動揺を押さえながら「はい」と答える。
社長は机に手を置き、一歩下がった。
「よし、その体制で進めろ。八百億は簡単に動かせる額ではないが、君なら守れると期待している」