10年越しの溺愛——御曹司は私を逃さない



「社長のせいじゃありません…!あんなこと言われて当然です!」


今日のミスは完全に自分の責任だ。確認不足、気の緩み、全部自分の甘さが招いた結果だった。会社のトップである社長に「気を抜くな」と言われるのは当たり前だ。

なのにどうして、こうやって優しくされると、こんなにも苦しくなるんだろう。

最近の自分はひどい。集中力も続かないし、ちょっとしたことで気が散ってしまう。前なら絶対にしなかったようなミスを平気でしてしまう。そんな自分が許せなくて、情けなくて、どうしようもなく悔しい。

気づけば視界が滲んで、ぽろぽろと涙がこぼれていた。


「……ダメ、かも」

「え?」


思わず両手で顔を覆いながら、小さく呟く。自分でも何を言っているのか分からない。ただ、このままじゃいけないという焦りだけが、胸の中で大きく膨らんでいく。

ダメかもしれない。このままじゃ、きっと何もかも中途半端になる。仕事も、気持ちも、全部。

社長と同居してから、少しずつ、でも確実に何かが変わっていった。優しくされて、守られて、気づかないうちにそれが当たり前になってしまっている。自分で立っていたはずなのに、いつの間にか寄りかかっている。

そのことに気づいてしまった今、足元がぐらつくような不安に襲われる。

それ以上に怖いのは、その原因がはっきりしていることだった。

社長のことが、好きだから。この気持ちに振り回されて、自分が自分でいられなくなるのが、怖い。


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