10年越しの溺愛——御曹司は私を逃さない
画面に数値を打ち込み、送金ボタンを押す瞬間、心臓は爆発しそうにドクン、ドクンと鳴った。
指がボタンに触れ、押し込む。緊張の塊が解ける瞬間、画面に「決済完了」の文字が浮かぶ。
「………よし」
送金完了の瞬間、ほっとしたのも束の間、経理部の電話が一斉に鳴り始めた。
海外の担当者からだ。
「こちらの口座にまだ入金が確認できません。おかしい、確認してください!」
一瞬、頭が真っ白になる。
八百億円という金額――もし入金がされなければ、会社全体が国際取引で信頼を失い、黒崎グループの顔に泥を塗ることになる。
パソコンの画面を確認しても、送金自体は正常に処理されている。
原因は銀行側か、相手先か、あるいは国際送金システムのトラブルか――時間との勝負だ。
経理部の同僚たちは皆、動揺しながらも必死に原因を突き止めようとする。
部長の声がフロア全体に響く。
「全員、落ち着け。まず原因を切り分けろ。白石、即座に現地担当と連絡を取れ」
電話越しに英語でやり取りをする。耳に入るのは緊張と焦りの声、そしてわずかな雑音。