10年越しの溺愛——御曹司は私を逃さない
心臓がどくどく鳴り、手先は冷たくなる。送金確認の書類を再度確認し、スクリーンショットやメールを整理しながら、頭の中であらゆる可能性を考える。
すると、背後から低く冷たい声が聞こえた。
「白石、進捗はどうだ?」
振り返ると、社長が静かに立っている。まるで最初からこの混乱を見抜いていたかのような、圧倒的な存在感。
私の言葉は喉に詰まり、どう報告すべきか迷う。彼の視線は冷静で、それでいて全てを見透かすように鋭い。小さなミスや迷いは一瞬で暴かれる気がする。
思わず資料を握りしめ直し、口を開く。
「現時点では、送金自体は正常に処理されています。海外側の確認待ちですが、原因を特定次第すぐ対応します」
簡潔に答えたつもりだったが、心臓は早鐘のように鳴り続ける。
社長は静かに頷く。
「そうだな。だが、時間は容赦しない。八百億という数字を扱う責任を忘れるな」
その一言で、再び胸に重く何かがのしかかる。
逃げ場のない現実と、巨大な数字、そして黒崎蒼の圧力――全てが私を包み込み、体の隅々まで緊張で引き締める。
電話越しの海外担当者の声、パソコン画面の数字、フロアのざわめき、そして黒崎蒼の存在感が、私の視界と意識を完全に支配する。