10年越しの溺愛——御曹司は私を逃さない
社長とは、恋人関係でもない、将来の話をしてるわけでもない。だから本当は「どうなるか分からない未来」に対して、全部答えを出そうとして苦しくなってるだけなんじゃないの?
「世間は許してくれないかも」というより、「相手もそう思うんじゃないか」とか「いつかそう言われるんじゃないか」っていう不安の方が大きいんじゃないの?
社長は、「どうしたい?」ってちゃんと聞いてくれる人だ。ただ今は、距離が急に縮まった分、流されてる感じがするとか、気づいたらこうなってるのが怖いって思ってる。
だからたぶん今必要なのは、きっと…もう、恋はしないとか、この気持ちを抑えることじゃなくて…まず、私が自分で選んでると思える状態でいられてるかを確認することなんじゃ?
好きになることも、迷うことも、どっちも普通のはずだ。
でもその中で、自分の意思だけはちゃんと残したい。
社長なら、きっと分かってくれる。好きだから。社長のことが好きだから、私は前と同じようにはなりたくないんだ。
「……帰る」
小さく、でもはっきりとそう呟く。紗耶香はそれを聞いて、ふっと表情を緩めた。
「ん、いってらっしゃい」
怖い。でも、それ以上に、このまま逃げ続ける自分でいたくないと思った。
立ち上がりながら、深く息を吸い込む。大丈夫。