10年越しの溺愛——御曹司は私を逃さない



社長の綺麗な手が、そっと私の頬を撫でる。

その指先は驚くほど優しくて、さっきまでの強引さが嘘みたいだった。雨の音がまだ遠くで続いているのに、その瞬間だけ、音が全部消えたように感じる。

そして——唇が重なった。触れた瞬間、堪えていたものが一気に崩れる。ずっと押し込めていた気持ちが、堰を切ったみたいに溢れて止まらない。


「…す、き」


息をする余裕もないまま、それでも必死に伝える。好きです。好きです、社長。声にならないほど震えながら、それでも何度も心の中で繰り返す。


「好き」


もう一度、唇を離して、真正面から目を見る。

逃げない。もう、引かない。離れろと言われても、離れるつもりなんて最初からなかった。今まで散々振り回されたのは、こっちだ。だったらもう、全部受け止めてやる。


「どうなっても知らねーからな」


低くそう言いながら、社長はネクタイに手をかける。するりとほどかれる音がやけに近く感じて、心臓が跳ねる。


「えっ!?」


反応する間もなく、身体がふわりと持ち上がる。横抱きにされたまま、足が宙に浮く。いつもの冷静な社長からは想像できないくらい強引で、でもどこか必死で。そのまま迷いなく歩き出す足音だけが響く。

え、ちょっと待って、と思う間もなく、視界がぐるりと変わった。気づけば社長の部屋。ドアが閉まる音がして、次の瞬間にはベッドに雑に降ろされる。


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