10年越しの溺愛——御曹司は私を逃さない
「…っ、あのっ…待って…!」
「無理」
逃げようとしたはずの体は、社長に足を引っ張られ、あっという間に動けなくなった。気づけば社長の影がすぐ目の前に落ちる。私に跨る様な態勢に、逃げ場がない。
「…しゃ、ちょう…」
シャツのボタンに手をかける音が聞こえて、見ていられなくて、思わず視線を逸らした。
「お前が悪いんだからな」
「わ、私なにも…っ…ん!?」
言い切る前に、言葉は塞がれる。唇が重なった瞬間、思考が一気にほどけていく。
振り払おうとした手が、絡め取られて頭の上で自由を奪われる。
「……好きだ」
低く落ちる声が、すぐ近くで名前を呼ぶ。
「梨沙」
呼ばれるたびに、どうしようもなく胸が震えた。
何度も重なる距離の中で、何も考えられなくなっていく。
ただ、この人の声だけがやけに鮮明で。
苦しくて涙が出るのに、うれしい。どうしようもなく、うれしい。
「好き…梨沙」
「…んぁっ…っ!」
キスの間に器用に服を脱がされてしまう。恥ずかしい、とか。今日紗耶香の家に泊まる予定だったから下着は適当なのに、とか。そんなことが頭をよぎってしまったけれど。
好き、と梨沙、と甘い声で絶え間なく浴びせられるたびに、社長の余裕のない表情が見えて、まぶたの裏が熱くチカチカした。
「かわい…もっと見せて、梨沙」
「…っ、やっ…んっ…あ、」
「なにっ…?」
激しく打ちつかれて、意識が飛びそうだ。社長の汗が滴るのが視界の隅に見える。
だめ、ほんとに、もう、だめ。
「と、まっ…て…っん…!」
「はは。悪いけど、こうなったのは梨沙のせいだろ?」
「ち、がうっ…んっ…はっ」
「違うくねーよ。梨沙が可愛いから悪い」
なにそれ…っ!
言い返そうとするけれど、容赦なく腰を振り続けられるせいで、余裕がない。
もう何時間経ったかわからないくらいに愛して、愛されて。
耳元で囁かれた「愛してるよ」が、やけに深く残って、意識がふわりと遠のいた。