10年越しの溺愛——御曹司は私を逃さない
「井口、あのね」
「うん」
「…私、社長と付き合ってるの」
自分で言っておきながら、胸の奥が少しだけ震える。
「…うん」
「だから、井口の気持ちに応えられない」
「うん」
それだけ。井口はそれしか言わなかった。私のほうを見ようともせず、小さく息を吐く。
「分かってたって。最初から」
「…うん、ごめん」
「謝るなよ」
少しだけ強く返されて、思わず言葉が止まる。
「辛いときに、そばにいてくれてありがとう。井口がいたから、私は乗り越えられたよ」
嘘じゃない。本当に、何度も助けられた。
「入社してすぐの頃、覚えてる?井口のほうが私よりも何倍も忙しいのに、毎日顔出しに来てくれたじゃない。今もそう。いつも私のこと見ててくれて、ありがとう」
言いながら、胸の奥がじんわり熱くなる。恋愛とは違うけど、大切で、確かな気持ち。