10年越しの溺愛——御曹司は私を逃さない



「海外銀行のシステム更新による一時的未反映でしたが、送金自体は正常に処理され、入金は確認済みです。今後のリスクも把握済みで、再発防止策を検討中です」


社長は無表情のまま、資料に目を通し、わずかに頷いた。


「うん、いいな。迅速な判断と対応だった。今回の八百億の件も、白石の確認がなければ大問題になりかねなかった。経理部の力量は確かに見せてもらった」


その一言で、胸の奥に重くのしかかっていた緊張が少しだけ軽くなる。


しかし同時に、彼の評価は冷静かつ厳格で、次に何を求められるかを考えると、油断は許されないことを痛感する。


私は深く息を吐き、少し震えた手で資料を机に置いた。


社長の視線が自分の上にある限り、安心など存在しない。


でも、その冷徹な圧力の下で自分が成長していく感覚も、ほんのわずかに味わえる。


そして何より、社長という存在が、社員一人一人の行動や意識を変えてしまうほど圧倒的であることを、身をもって知った。



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